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分娩時出血を減らす食事指導は? [妊娠]

産婦人科医会のお仕事を手伝っている関係で、助産師さん向けの講演を依頼され、昨日行ってきました。
ぎりぎりまで外来やら、術後の患者さんが落ち着かないやらで、あやうく遅れそうになりましたが、
汗を拭き拭き無事間に合いました。
テーマは、「分娩周辺の出血の対処」でした。
1時間半の持ち時間を少しオーバーしてしまいましたが、自分たちの苦い経験も含めての講演内容になりました。
お産の最終目標は、元気なお母さんが、元気な赤ちゃんを自分の手で抱っこして退院することだというメッセージもなんとか伝わったことだと思います。
最後の質問タイムで面白い質問がありました。
面白いと言ったら叱られるかもしれませんが。

「30年以上お産に関わってきていますが、昔に比べて最近の産婦さんは出血が多いような気がします。その原因の一つとして、食生活があるように思います。先生は、分娩時の出血を減らすために、なにか食事指導をされていますでしょうか?されていたとしたら、どのようなものでしょうか?」

京都でも超有名な助産院で働く助産師さんからの質問でした。
すばらしい質問です。

 「私が思うに、出血が多くなる産婦さんは、やはり医療介入をした産婦さんが多くなる傾向があります。微弱陣痛などの後には弛緩出血が多くなり、吸引分娩をすればその分、産道損傷が大きくなります。そういった医療行為が必要な産婦さんは、結果として出血が多くなると思っています。一方で、何のトラブルもなく安産だった人は、不思議なくらい出血が少ないのは皆さんも経験されていると思います。出血を減らす食事指導はしていませんが、安産を導くような食事指導をすることで、結果的に出血は減らせるのではないでしょうか?」
ボクの答えは、もう少し長々と続いていましたが、要約するとこんなカンジでした。

たぶん、この助産師さんは「私はこうしている」という画期的な食事指導法をお持ちであったのかもしれません。ボクの回答にはあまり満足されていないようにも思いました。
欧米化した食生活が問題ではないか、くらいの意見だったのかもしれません。
もし、欧米化した食生活が問題であれば、国によって出血量が違うはずです。
古来の日本人が特別安産の国民であったなんていうデータがあれば別ですが。

ただ、その回答に、ボクは付け加えてしまいました。
 「ボクが外来で食事指導するとき、いつもこういいます。『妊娠して食べなきゃいけないものは何一つありません。ただし、食べてはいけないものはいくつかあります。いつもどおりの食事を、食べ過ぎないように、いつもどおりにしてください。』と。それで十分だと思います。」

ボクが知る限り、そんなにめちゃくちゃな食生活をしている妊婦さんはいません。もちろん、若いお母さんでスナック菓子をやめられない人はいます。それでも、スナック菓子は塩分やカロリーが多くても、もともと子供も食べるから毒になるようなものは入っていないはずです。(そう信じています)
ちょっと口にしたくらいでダメな妊婦になるわけではないと思います。

 「お産のときに出血が増えないようにするために、これを食べなさい。」
根拠もないのにそんなこと言えないですよね。

人前で話をするのは嫌いなほうではないので、また機会があればどんどんいろんな場所で話していきたいと思います。

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fukutaro

倉敷の産婦人科医のfukutaroです。前回の『胎児の・・・』に触発され、久しぶりにコメントします。お産をあつかっていて、最も難しいことの一つが、お腹の中の赤ちゃんの状態をどう把握するかということで、それこそが、私たち産婦人科スタッフの最も大切な仕事の一つと思っています。我々はともすれば、妊婦さんの嫌がることをしなければならないですが、どれも、お腹の中で、苦しくても声を出すことのできない赤ちゃんを守るために行っている、そのことをきちんと説明すれば、多くの妊婦さんは納得してくれます。ただ、日頃忙しいと充分そのことが説明できずに押し付けになり誤解をされているように思います。『胎児の声を聞く』そのことの大切さと難しさ、それをもっと社会全体にきちんと伝えていければ、妊婦さんの我々への誤解はへり、また同時に産婦人科のしごとの魅力もアピールできるのではと思っています。是非、これからも熱いメッセージを引き続きお願いします。
by fukutaro (2010-06-27 21:39) 

さくら♪

はじめまして♪ 先生のブログ 度々拝見していました。
今回 お産時の出血についてふれられていたので
コメントしたくなりました。

私は 二度出産しています。一人目は 促進剤で出産しました。
やはり 出血量が多くて 産後が辛かったです。
二人目は 自然で 難なく生まれました。 
出血量も普通で楽なお産でした。

でも、ずーっと 
なぜ一人目は出血が多かったのかなぁ?
私の何かがいけなかったのかな?と疑問に思っていたのですが
先生のブログを見て なるほど!と思いました。

産婦人科の先生は 赤ちゃんが無事に産まれてくるように
その時その時で最善の方法を選んでくれていると思います。
その時 生まれた子も 元気に育っています。(*^_^*)
無事 産ませてもらえたことに 感謝しています。=^_^= 
by さくら♪ (2010-06-28 11:00) 

めぐっぺ

私は出産時の出血は少な目だったようなんですが、予定日超過で内診内診内診の毎日で…出産前から大量出血してました…そしてひどい貧血になりました。分娩室から出られなくなり車椅子を用意されましたがもう座っていられないぐらいで…でも早くお部屋に戻りたくて助産師さんに寄りかかりながら隣の陣痛室で休むことに。。。お食事が用意されましがとても食べられず。破水した妊婦さんが入ってきたので夜な夜なやっとの思いでお部屋に戻りました。即鉄剤が出されしばらく我が子に会いに行けませんでした。2人目は気をつけたいです。私もスナック菓子が止まらなくなりました。。。
by めぐっぺ (2010-06-28 12:04) 

じゅりあ

大量出血。。私も1人目で体験しました。
まさに先生のブログにかいてあった、
「微弱陣痛、産道裂傷」まさにそのとおり!!
その後の貧血もひどかったし、ショックで発熱して
2日間は起きられなかったし・・とつらい思い出。

でも食事って私には、あまり関係ないような気もします。
同じ食事とっていても、1人目はひどかったのに
あとは安産でしたから。
by じゅりあ (2010-06-29 07:45) 

ニコン

開業助産師です。
先生の「お産の最終目標はお母さんも赤ちゃんも元気な姿で退院することです。」のセリフは私も助産所での見学にいらした方々に必ずお話するセリフです。決して助産所で産むことや自然出産することがゴールではない、と。
医療設備が病医院に遠く及ばない場所でお産することの不安さがお産を楽しみに思う気持ちよりも少しでも勝るようならば、それが予定日直前のタイミングであったとしても、今回のお産は病医院でされた方がいいと思います。ともお伝えしています。とても信頼のおける嘱託産科医師のバックアップがあってこそ自信を持って言えるセリフです。

私も食事内容と出血との直接の因果関係はわかりません。
妊婦さんには「夫婦仲良くしてね。ご飯をおいしく食べてね。できればニコニコ笑って過ごしてね。赤ちゃんにお話してね。辛くなければお散歩してね。」とお伝えしています。

by ニコン (2010-06-29 09:40) 

ちばおハム

おお、そうなんですか。
私は低置胎盤(とでも言うのでしょうか?)のときは出血がとまらなかったのでひどい貧血になりました。
先生たちはおもったとおり!見たいな顔してましたけどね。
鉄剤ものまない(だって、先生がいいっていったんだもん!)ので1年も回復するのにかかってしまいました。
沖縄では今小さく生まれる子がおおくて、nicuが足りないんですよ。
こちらは妊婦さんたちの努力で少しは改善できそうですけどね。
子沢山の沖縄、妊婦さんが少々無理することもあるんでしょうね。
by ちばおハム (2010-06-29 14:14) 

haru

fukutaro先生、ご無沙汰しています。
先生のおっしゃるとおり、ある意味、「胎児の声を聞く」、こんなに簡単なメッセージを伝えることが意外と難しいのだと思います。
医療者として決して手を抜いている訳ではないのですが、伝えたつもりが伝わらなかったりするのです。
すべては、赤ちゃんが元気に産まれてきてくれるための、大切な確認作業です。

by haru (2010-07-11 11:34) 

haru

さくら♪さん、コメントありがとうございます。
元気な赤ちゃんが生まれても、お母さんが元気でなかったらいけないのです。
実は先週、大出血になったお母さんがおられました。
このブログに書き込んだ後だったので、落ち着くまでおとなしくしていましたが、今日、やっと元気になられた様子でしたからひと安心しています。
日頃の勉強も生かされたと思っています。

by haru (2010-07-11 11:40) 

haru

めぐっぺさん、コメントありがとうございます。
鉄剤がまた、あんまりおいしくないというか、むかついたり、便が硬くなったり、いろいろ副作用がでるんですね。
鉄分強化ポテトチップス(減塩)、あんましおいしそうではないですが、あったら売れますかね?
by haru (2010-07-11 11:43) 

haru

じゅりあさん、コメントありがとうございます。
けっこう皆さん、大出血されてるんですね。
輸血するまでの方は少ないとは思いますが。
母子手帳に記入する出血量は、500グラム以上だと「多量」になります。羊水だけで500mlくらいはあるので、羊水が混じってしまうこと多いので、それ(母子手帳に記入された出血量)が正確かどうか微妙ではあります。
だいたいの判断で、「中等量」や「多量」と記入されることもあります。
by haru (2010-07-11 11:49) 

haru

ニコンさん、コメントありがとうございます。
おっしゃるとおり、普通に、ニコニコしていれば、元気な赤ちゃんが生まれます。
そう信じています。
妊娠して突然生活を変えたからといって、体質は変わらないし、むしろ変える方が悪いかもしれないと思うこともあります。
それでもおこる、周産期の異常については、ボクたち医療者が見守って対応するのでしょう。
異常と正常の見極めが大切なのであって、「望ましい食生活」などで正常妊婦を「管理』するというのとはすこし違う気がしますね。
by haru (2010-07-11 11:55) 

haru

ちばおハムさん、コメントありがとうございます。
産後の貧血治療については、産婦人科医の中で意見が分かれることがあります。
注射で手っ取り早く治す、とか、飲み薬でいく、とか・・・。
あるいは、おいしいご飯食べるだけで十分だ、と言ったりもします。
産んでしまえばこっちのもので、のんびり治したらいいと思います。
ふらふらで、授乳や、子育てに響くようなら早く治すべきでしょう。
採血の数値だけではなかなか決められない気もします。
by haru (2010-07-11 12:03) 

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