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HPVワクチン、ボクも受けました [産婦人科医]

子宮頸がんで亡くなる人は、
今の日本でも、毎年おそよ3000人ほどです。

ボクも、病院勤めをしているとき、多くの患者さんを治療しました。
比較的、若い年齢でなる方が多いので、
今も、うちのクリニックで術後の定期チェックを、更年期症状の治療と一緒にしている方もおられます。
そして、残念なことに、治療の甲斐なく、
命を落としていった患者さんもいました。

がんの末期は、担当医として、すごくつらいものがありますが、
子宮頸がんの患者さんの場合は、
肺、肝臓、腎臓など、生活臓器が問題ない方も多く、
意識が比較的はっきりしている一方で、
骨盤の腫瘍がどんどん大きくなり、出血が止まらず、
痛みと貧血がつづくのです。
(この表現で、気分を悪くされた方がいらっしゃれば、お許しください。)
そして、
このつらい病気には、
愛する人との性行為で感染した、HPVが原因だという、
切ない思いが、いつまでも残るのです。

 「ワクチンを、打っていれば・・。」

子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)の接種率は、
わが国では、いまだ低いままです。
ワクチン接種をした際の副反応があり、それをきっかけに、
HPVワクチン接種の、積極的な推奨することを控える、という行政の動きがあったからです。
いまも様々な議論はされていますが、
ようやく、HPVワクチン自身の副反応ではないことが受け入れられるようになり、
少しずつですが、HPVワクチン接種を受ける方が増えてきています。
この数年間の行政の遅れとでもいうのでしょうか、
世界的には、HPV9価ワクチンが一般的なのですが、日本ではまだ認可される動きもなく、4価ワクチンのままです。
9価ワクチンで90%以上の子宮頸がんが予防されるのに対して、
現在の4価ワクチン(実際は子宮頸がんに対しては2価)は、66%程度の予防ということになります。
ただ、命にかかわる状態への進行を予防する目的において、
4価のワクチンでも十分な効果があると聞いています。
3回のワクチン接種を受けた全員が抗体を持てるかどうかわかりませんが、
少なくとも、皆が等しく接種を受けることが、ワクチンによる感染症予防の考え方です。
「自分だけが受けた」は、もしかしたらあまり関係ないのかもしれません。
風疹のワクチンの場合、何度も受けたにもかかわらず、抗体がつかない人はたくさんいるわけです。
皆が受けることで、抗体がつかない体質の人にとっても、安心な集団ができると思っています。

もちろん、年1回の子宮頸がん検診を受けることが、何よりも早期発見、早期治療につながります。
大学病院などでは、HPVに対する治療薬の治験も始まっています。
新しい治療ができれば、ワクチン接種の機会を逃した人でも、より安心して治療受けることができるようになるでしょう。

うちのクリニックでも、毎日のように、
子宮頸がん検診で異常が指摘された患者さんの精密検査を行っています。
実際に、ワクチンを受けた方でも、異常を指摘されることがあります。
しかしながら、たいていは、軽度異形成どまりで、それ以上進行していることはありません。
ボクの実感として、HPVワクチンは十分な効果があるようです。

 「ワクチン、受けていてよかったね。」
「はい。受けるとき、怖かったですけど。」

先日、
自分でも、HPVワクチンを受けることにしました。
いつも、患者さんにしているように、
細めの針で、ゆっくり、時間をかけて筋肉注射してもらいました。
まったく、痛みはありませんでした。

50代後半になって、
HPVワクチンを受けるおじさんは、世界的にも珍しいかもしれませんが、
ワクチンを受ける、若い患者さんたちの気持ちが少しでも理解出ればと思います。

そして、
 「ボクも、受けたよ。」
という言葉で、一人でも安心して受ける方が増えたら、と願っています。

今年も、あっという間の一年でしたが、
2月、9月と2回転倒し、右肩関節の脱臼やら骨盤の打撲やら、
半分くらいは、いつも、どこが痛かったです。

来年は、ケガをしない一年を送りたいです。

少し早いですが、

すべての子供たちと、
その笑顔を見守り、その笑顔で、勇気づけられる、すべての大人たちに、
メリークリスマス!!


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なつ

先生、お久しぶりです。以前こちらに書き込みをさせて頂いたものです。約四〜五年前に破水から入院になり、赤ちゃんは無事生まれたものの(詳細は書けませんが)持病に対し、担当の産婦人科医が心無い発言をし、傷つきました。という旨の書き込みをした者です。
なお2年ほど経って、赤ちゃんは自閉症スペクトラムがわかったとも、書き込みました。


…私のすむ県のある地域にある、発達支援センター○○○に定期的に、息子は、診察を受けに行っております。療育も受け続けかなり落ち着いてきました。…食物アレルギーも全ての種類が解除になりました。

私は四十代半ばを迎え、生理周期のある時期にイライラ や落ち込みが強く感じられるようになりました。
他色々ありますが現在かかっている産婦人科医さんにお話しくすりを調整してもらっております。


前置きが長くなりましたが、子宮頚がんワクチンは既婚の男性でも打ってよいものなのですね。
愚問かもしれませんが
既婚の、子持ちの女性でも打ってよいものなのでしょうか?

ちょっと興味があるのです。

※しかし打てたとしても費用が五万円ほどかかるので、年収X万円サラリーマン家庭だと、
正直接種をためらう金額です。。。。



話がややこしくなりますが
私は娘が定期接種対象年齢になりましたので昨年秋から受けさせました。
推奨していないのでこちらから住んでいる自治体の保健センターに接種券を取りに行かなくてはなりませんでした。 
また、受けさせる医療機関ですが
産婦人科ではなく、
…女医さんのいる子宮頚がんワクチン対応している、地域の、非産婦人科の開業医さんで受けることにしました。

…いろんな考えがあるとは思いますが、まだ小学生の娘を産婦人科に連れて行くのに抵抗があったのです。…
まだ三回目が済んでおりません。

高校生位まで自治体の補助券が有効ですが
早めに受けさせることにしました。
by なつ (2020-03-11 22:43) 

haru

なつさん、コメントありがとうございます。
現在、わが国で使っているHPVワクチンには、4価ワクチンのガーダシルと、2価ワクチンのサーバリックスがあります。
ガーダシルは、子宮頸がんの原因としてもっとも確率が高いとされる16型、18型以外に、尖圭コンジローマという性感染症の原因となる型である6型と11型も含む4価ワクチンです。
男性が使用する目的としては、女性に16型、18型を感染させないというだけでなく、尖圭コンジローマの予防になります。
日々の婦人科診療で、この尖圭コンジローマの治療をすることが多いため、HPVワクチンを受けることを考えました。
HPVワクチンの接種については、
小児科の先生も積極的に取り組んでおられますし、ぜったい婦人科で受けるべきといいませんが、HPVワクチンの接種をきっかけとして、女性として、婦人科のかかりつけ医との関係が始まることは大切だと考えます。
思春期だからこそ、婦人科に受診させて、何かあればここを受診すればいいんだと教えるべきではないでしょうか?
子宮頸がんになる以上に、性感染症や予期せぬ妊娠で婦人科を受診する女性は多いからです。
あと、個人的には女性医師である必要も、とくにないと思います。ちゃんと、本人たちに必要性や安全性を説明できるかどうかが大切です。
最後に、
HPVワクチンを受けさせるべきかどうか、という議論がある現状自体が悩ましいと思います。

by haru (2020-03-12 10:09) 

もとけい

こんにちは。妊娠中のインフルエンザの予防接種をどうしようか悩み、調べてここを知り、10年になりました。時々更新されるのが、何だか宝物を見つけたようなワクワクがあり、ほっとします。今、コロナで、世界が大変です。医師、看護師、どんなに大変か。先生も、お気をつけて。お子さんたちも、ご無事でありますように。
by もとけい (2020-04-19 07:48) 

haru

もとけいさん、コメントありがとうございます。
今は、新型コロナで、日々の診療が、ある意味、「命がけ」です。
ボクの場合、年齢も高くなりましたし、基礎疾患がないわけではないので、感染すると重症化する可能性もあり、怖いです。
しかしながら、怖いというだけで、休診にするわけにはいきません。
感染予防に、十分注意しながら、頑張っています。
by haru (2020-05-03 11:14) 

なつ

haru先生お久しぶりです。

 3年前は、私の住む県、の自治体で
子宮頸がんワクチンを接種してくれる医療機関が30か所ほどあったのですが
その中で産婦人科(2箇所はお産非対応の産婦人科)は3箇所でした。

 その3箇所とも全て、母親である私が
「(過去にそれぞれ病院、医師から)配慮のない対応をされた」と感じており
(少なくとも2箇所は)
「絶対っっっに娘も行かせたくない」(緊急性がある場合は別に考えますが…)

…となっております。
そういうこともあり、内科(小児科の標榜もしている)の病院を選択したという
経緯があります。

そんなこんなで、
娘は高校受験です。娘の方から、
「受験日に生理がかぶるかもしれないので(生理痛で)コンディションが落ちる」のが心配だから、

「生理をずらしたいので産婦人科に連れて行ってほしい」とリクエストがあり

古風な私は内心驚いたのですが、
(実際、昨年一学期、生理痛で
期末テストに、集中できず成績が落ちたことがあった)
受験の日に辛い思いを、させたくないので
(3箇所のうちまだ比較的娘を連れて行ってもいいと思える産婦人科へ)連れて行きました。
痛み止めをもらいました。
2月に、生理が来てから
生理をずらす計画を立てたいからと2月も受診するように言われております。


お腹の上からエコー検査を提案されたのですが、娘は想定外だったようで
断ってしまいました。
by なつ (2023-02-10 23:33) 

なつ

haru先生へ

私は今年で47歳になりますが

私は子供のころ、母親に連れられて産婦人科に行ったことはありません。

必要もなかったのですが…
(田舎でしたし…)

生理痛が酷くなったのが17歳でした。
すごく我慢して、
初めて産婦人科に行ったのが19歳で、一人で行きました。
私は
田舎から、大都会にある大学に進学し一人暮らしを始めたころでした。
親からの仕送りの数千円を当てて…

しかし、一度行ったきりで 二度と行きませんでした。。
(若い頃の私は少しズボラ?なところがあり、大学生活をエンジョイしたいとか、授業や、勉強のことで頭が一杯になり)忘れていました。
産婦人科に数ヶ月に一回でもいいから行く。とか、時間を作る。という発想ができませんでした。。

私と同世代でも高校生で親と産婦人科に行った、という話は聞いたことはありました。(修学旅行があるから生理をずらしたいとか…)
私の実家はそうではありませんでした。


男まさり?なきつい性格の人でして。。
学校の勉強だけしてなさい、良い成績を取りなさい、その関連の話しか聞いてくれないようなところがありました。
70歳を、過ぎた今は少し丸くなったような…

(色々書いたのですが全て省きました。)
…実母の対応や言動はずっと許せず、未だ私の中ではしこりが残っています。それに、私の同世代の女性(臨床心理士さんなどは除く)にも長年打ち明ける機会がなく
それも私の心のしこりとなっています。。


ただ、私も47歳を迎える今、上記のことは遠い昔となりつつあります。。。…
by なつ (2023-02-11 00:11) 

なつ

↑すみません、上記の書き込みですが

大学卒業以降、24〜25歳位から
アルバイトや仕事のお金で再度
「産婦人科で生理痛の相談」
「痛み止めの処方」などはしてもらうようになりました。。

ただ、景気の悪い時代で、
安定した収入もなく、産婦人科には
本当に痛いときに
一年にニ、三回行く程度でした…
by なつ (2023-02-11 00:20) 

haru

なつさん
たくさんのコメントありがとうございます。
情報があふれている今の時代、
それぞれの考え方も、情報の取捨選択で多様性の時代です。
プレコンセプションケアというものが世界的にも重要視されています。
妊娠出産のまえから自分をケアすることで、男女がより健康になり、次世代の子どもたちをより健康にするものです。
また、「生理の貧困」という新しい言葉も、社会的な問題になっています。
まだまだ改善すべきことはたくさんあります。
by haru (2023-05-29 06:06) 

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