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やっと人生の半分 [産婦人科医]

今月末、ボクは誕生日を迎え、ようやく、人生のちょうど半分を、医師として、産婦人科医として過ごしてきたことになります。
ボクが医師になった当時は、国家試験が4月にあり、合格発表が5月の後半だったため、6月1日付の就職でした。浪人している関係で、やっと今になって、人生の半分に到達したわけです。
産婦人科医になって、女性のキモチをいつも考え、いわゆる女心の複雑さをいつも感じてきました。
(時には、しんどいなと思うこともありました。)
たとえば、
妊娠した分かった時の女性の表情は、本当に複雑です。
やったー!と、ガッツポーズで
幸せを感じている女性ばかりではありません。
今は産めない、産みたくない、産ませてもらえない、
産んでいいと言ってもらえないかもしれない、
産むのが怖い、もしかしたら遺伝的に何か異常があるかもしれない、
誰の子かわからない、
絶対パートナーとの子でない、
どうしたらいいのかわからない、などなど。

とくに開業してからは、こういった悩みを毎日受け止めています。

(大きな病院で産科外来を担当していたころは、産むと決めている女性がほとんどでした。
産むと決めた後に、いろんな不安があって、大きな病院へやってくるのです。)

閉経を迎えた女性のキモチも様々です。
月経痛で苦しんできた方、ずっと妊娠を待ち望んでいた方、
閉経を受け入れるキモチも、本当に様々です。

そして、自分がオトコなのか、オンナなのか(いやいや、もちろんオトコですが)、わからなくなる瞬間さえあります。

ただ、開業して、妊娠という大問題に直面した、若い女性に接する機会も多くなって、自分で気づいたことがあります。

それは、
「こういう時、きっとオトコはこう思っている。」
と感じることです。

ボクのクリニックに来て、どうしようか悩んでいるとき、パートナーの男性が一緒であることは少数派です。彼女らは、自分自身でもちろん考えているのですが、一方で、パートナーである男性が何を考えてるかわからないと悩んでいるようです。
彼女ら、それぞれが抱えているいろんな状況や問題をひとつひとつ聞いていくうちに、
「多分、カレシは今こう考えているのかもしれない。だから、カレシには、こう声をかけてみたらいいかもしれないね。」
などと、会話の中から、男性のキャラの自分がいることに気づくのです。
そして、話していくうちに、彼女らは、気分がずいぶん楽になったように思えます。
妊娠は、彼女らにとって、最大のピンチかもしれませんが、
人間として、自分のみならず、パートナーにとっても、
大きく成長するきっかけになると信じています。

彼女らは、女性である自分を、女性のキモチがわかる人に共感してもらい、女性としてのアドバイスが欲しいと思う一方で、
パートナーのキモチがわからず、不安に思い、パートナーの理解できない言動、つまり、オトコのキモチを解説してほしいと願っていることに気づくようになりました。
世の中で、オネエと呼ばれている男性が、男性からも女性からも受け入れられているのは、きっとそういうオールマイティさが求められているからなのではないでしょうか?
(それ以外に、性的マイノリティゆえの寛容さもあると思います)

長い人生の半分もかけて、ようやく気付いたことが、たったこれだけなのか?と悲しく思う瞬間もありますが、ボクにとっては、この時間は欠かすことができない時間だったと思っています。

産婦人科医であることが人生の3分の2を占めるまでには26年以上かかりますが、
80歳で見えてくる新しい次元の世界があるとしたら、
残りの人生がすごく楽しみになってきました。

開業して「毎年、自分の誕生日に、お産に立ち会う」という、ボクの楽しみはなくなってしまいましたが、今思うと、それが最高の贅沢であったと気づかされます。

10年後、いやいや、20年後の自分をイメージして
まだまだ、ボクの修業は続きます。

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あさがお

以前もコメントしましたが、子宮腺筋症で無事に出産した我が子も、あと数ヶ月で4歳になります。羊水含めて4リットルの出血でした。術後に子宮が収縮してくれず…そして半年後には生理がきまして、相変わらずの激痛…ボルタレン座薬50ミリを常用する私に、夫からそんなに使うと胃がんのリスクが高くなると言われ2年前に子宮摘出を決断し、辛い生理痛ともサヨナラしました。その後は元気いっぱいです。
悩める私にこのブログや先生の暖かいお返事に癒されました。
もう、コメントお忘れになったかもしれませんが、出産報告していなかった気がして!


お誕生日おめでとうございます。
開業されてからはいかがですか?
主人も開業医でしてね、7年目に税務調査の洗礼を受けましたよ笑
いやぁ、、大変でした。
主人はお金に無頓着なので、これを機にアレコレとお手伝いをしています。

なんだかまとまらない文章ですみません。

これからも、お身体を大切に、益々のご活躍を祈ってます。

by あさがお (2017-12-10 12:12) 

haru

あさがおさん、コメントありがとうございます。
出産のご報告、ありがとうございます。
お産の現場を離れた今も、妊婦さんを診察しています。
病院に行くまでもないリスクのない妊婦さんばかりですが、中には、自分がハイリスクであることを説明しても理解してもらえないこともありますが、根気強く、時間をかけて、説明します。
すべては、元気な赤ちゃんの産声を聞くためです。(自分では聞けませんが)
そう思って、今もニコニコ頑張っています。
by haru (2017-12-14 13:36) 

ゆき

はじめまして。
今3歳になる娘の妊娠中にこちらのブログを偶然見つけて以来、拝見させていただいています。
いろいろなお話を読むたびに、こんな先生の病院をかかりつけにしたいなぁと思っていました。
開業されたとのことで、自分なりにちょっと調べてみたのですが、もしかしたらここがharu先生のクリニックかも!というクリニックがありました。
もし診察の時、ブログされてますかと聞かれたらharu先生はどう対応されますか?
不快に思われるならこっそり胸に秘めていた方がいいのかなぁと感じています。
もしよろしければ、ご意見を聞かせていただけたら嬉しいです。
by ゆき (2017-12-14 22:54) 

りかこ

わたしからすると、お久しぶりです!!
haru先生のblogは、わたしの第一子の入院時代に出会いました。2013年7月の頃です。
先生のblogはとても大好きで、よく拝見してました。なのに、スマホが壊れ、先生のblogのURLが分からなくなり、4年がたちまた見つけられましたー!12月20日に三人目を出産してネットサーフィンしてた甲斐がありました!
またお邪魔しに来ます!blog更新楽しみにしております!!
by りかこ (2017-12-23 23:31) 

haru

ゆきさん、コメントありがとうございます。
ひとりでもたくさんの方にとって、身近なかかりつけ医になることが、ボクが開業した理由の一つでもあります。
うちへ受診してもらうことはなんら問題ありません。すでに何人もの方がこのブログを見て、受診されています。
たいしたリアクションはできませんが、ブログの話題をしてもらってもいいです。
by haru (2017-12-24 10:21) 

haru

りかこさん、コメントありがとうございます。
出産、おめでとうございます。
子育てをしていると、なかなかゆっくりネットサーフィンする時間がありませんよね。出産が終わって、自宅に戻られると、またゆっくり読む時間が無くなりそうですね。
おそらく、この4年間では、ほとんど更新されていないので、申し訳ない気持ちです。

by haru (2017-12-28 22:45) 

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