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Rhマイナスでよかった! [妊娠]

妊娠すると、血液検査の中に必ず血液型というのがあります。

お産のときに出血が多くて、万一輸血するときのために予め血液型を調べておくというのが一番の理由なのだとは思うのですが、それ以外の目的として、Rhとか、不規則抗体とか、いわゆる血液型不適合妊娠の検査があります。
とくにRhマイナスの場合は、母体が妊娠中に胎児のRhプラスに感作されて抗体ができてしまうしまうと、次の妊娠のときに、今度はその抗体で胎児を攻撃してしまうことなどがおこる可能性があるのです。
そのために、妊娠中期に念のためにグロブリンを注射します。
この辺は意見が分かれるところでもありますが、うちの病院では同意の上、グロブリンを注射することを勧めています。

先日、ある妊婦さんがうちの病院でお産するために受診されました。
すでに妊娠34週です。
それまで、自宅近くの、お産を取り扱っていない診療所で検診を受けておられました。
分娩予約がてらに4月に一度だけうちの病院に受診されていました。
今年の4月から母子手帳にいろんな検査項目の公費負担券が付いてきたので、3月中に妊娠初期の採血検査をそちらで済ませていたのですが、もったいないので初期にしかできない検査をしておくことにしたのです。
その中に血液型もあったのであわせてしておきました。
もちろん、いくつかの検査項目が重複することはご本人も承知の上でした。

そして、この方の血液型がRhマイナスだったのです。

帰ってきた検査結果はすべてチェックするのですが、この方の結果を見て、Rhマイナスに赤いボールペンで二重丸のマークをつけていただけで、ついそのままになってしまっていたのでした。

本当に申し訳ないのですが、それ以上のアクションをしなかったことを反省するばかりです。

そして、その34週で受診された際に、

 「血液型、Rhマイナスでしたね。 連絡しなくてすみませんでした。 ところで、グロブンリン注射は済んでますか?」

カルテの、4月の受診した際の記載に、はっきりと『診療券でもう一度採血』と記載してあるので、少なからず、ホッと胸をなでおろしました。

「えっ? A型のRhプラスって聞いてますけど。」
 「ええっ? Rhマイナスなんですけど。」
「前回のお産のとき、Rhプラスって聞いています。」

なんと、今回は2回目のお産だったので、今までかかっていた診療所では血液型を調べていなかったのです。
今回はたまたま公費負担券をもらえたので調べたわけです。

「子供はRhマイナスなんです。 ついでに弟も。 でも、私はプラスって聞いていました。」
 「ご主人は?」
「知りません。」
 「ご主人が、もし、Rhマイナスなら、今回のお腹の赤ちゃんもRhマイナスだから、抗体ができてこないはずです。」

「???」

この方も、何がなんだか理解できていない様子でもありました。

すぐさまこの方が前回お産した産院に連絡し、確認したところ、やはりRhマイナスでした。
そして、それが単なる見落としだったということで謝っておられました。
謝って済む話か?と一瞬思いましたが、うえのお子さんがRhマイナスで助かったわけです。
でも、上のお子さんの血液型は臍帯血で調べているので、そのときに気づくチャンスがあったわけでもあります。

幸いにも、今回の妊娠初期も、34週で直ちに行った検査でも不規則抗体検査が陰性という結果でした。
今のところ、Rhプラスで感作されていません。
次は、問題のご主人の血液型です。

お仕事で忙しいご主人に、紹介もとの診療所に行ってもらい、血液型を調べてもらいました。

3日後、電話で連絡がありました。
「主人も、Rhマイナスでした。」
確認のために、検査結果をファックスしてもらい、この目で確認しました。

 「Rhマイナスでよかった!」

これで、グロブリン注射の必要はなくなりました。
もちろん産んでからも必要ありません。(産んでからは赤ちゃんの血液型を調べてから行いますが)

血液型がRhマイナスだったことでこれほどホッとしたことは今まで一度もありませんでした。
多分、一番ホッとしたのは、最初のお産をした産婦人科の先生だと思いますが。

せっかくした検査も、結果をちゃんと見てひとつひとつ、丁寧に患者さんに説明しないと、何のためにしたのかわからなくなります。

今回は、反省することが多かったです。
まだまだ修行は続きます。

がんばります!


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ちばおハム

これはたいへんでしたね。
でもご夫婦ともRH(-)、お子さんも(-)ってすごいです。
RH(-)の方同士が知り合われることがあるんですね。
ヘンなところに感動してます。
そういえば大学の同級生でやっぱりRH(-)の子が出産するときに気にしていたのを思い出しました。

by ちばおハム (2009-09-11 11:09) 

りょお

こんなこともあるんですね~。
RHマイナスって、滅多にいないって聞きますけど・・・。
本当に、RHマイナスで良かったですね。
キチンと検査しても、結果を見落としていたらなんにもなりませんね。
気をつけなければ・・・。
by りょお (2009-09-16 23:15) 

haru

ちばおハムさん、コメントありがとうございます。
こんなこと初めてです。
長く産婦人科医をしているといろんなことがあります。
Rhマイナスの妊婦さんがいたらご主人の血液型を調べることにしていますが、今回は初めてです。
昔、流産のかたがおられて、ご主人がアメリカ在住のアメリカ人で、アメリカに電話して聞いたことがありましたが。
by haru (2009-09-18 00:08) 

haru

りょおさん、コメントありがとうございます。
検査結果の思い込みって、意外と多いかもしれません。
検査とは、結果の説明を患者さんにして初めて終了なのです。
検査をして、結果の説明は自分以外のドクターに任せるドクターがまれにいますが、ボクとしては医師であることを放棄しているように思います。
by haru (2009-09-18 00:14) 

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