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面会をお断りしています [産婦人科医]

今、新型インフルエンザが流行しています。
うちの病院の内科でも、毎日何人も感染者がでており、いつボクたちスタッフがインフルエンザにかかるか緊張しています。
そんな状況下でも、幸いにも、現在のところ、うちの産婦人科病棟の中には感染者が出ていません。

うちの病棟の構造として、病棟の出入り口が詰所の前だけになっています。
その出入り口もオートロックがかかっており、インターホンで確認してからでないとドアを開けてもらえません。
それ以外に給食の搬入や患者搬送のエレベータはもう一つあるのですが専用の鍵がないと使用できません。そして、その他の非常口などにはすべて監視カメラが設置されています。これは、不審者が入ってきたり、赤ちゃんを連れ去ったりするこころない犯罪に対する予防策としてのセキュリティーシステムです。

新型インフルエンザは妊婦に危険性が高いとされているので、うちの院長からも十分な対策を施すように命じられました。
うちの病棟には切迫早産で安静入院の治療中の妊婦さんが方が何人もいて、NICUには呼吸器を使用している赤ちゃんが入院しているので、できる限り感染を予防する対策が必要です。

そこで、すべての患者さんに面会をお断りすることにしました。

面会者をお断りすることで、病棟に出入りするかなりの人数が減るはずだからです。

もちろん、小児科の患者さんには付き添いが必要ですし、お産のときには立会い出産があり、手術や帝王切開には家族が手術中やそのあとに付き添います。
そういった、どうしても付き添いが必要な状況以外の面会をお断りするのです。

お産が終わって退院間近の患者さんの中には、付き添い願の書類に家族、兄弟、子供など、10人近くの名前を書き込み、なんとかお願いしますと頼み込む人もいました。
外来で、これからお産が来る人に説明をしたところ、中には混乱して、たった一人お産なんてできないと涙ぐむ人もいました。
これをひとりひとり患者さんに説明するだけでかなりの労力でした。

面会謝絶は、患者さんに「元気ぃ?」と会いに来る人たちのことを想定して言っているのです。

立会出産や、手術を受ける患者さんの家族はいわゆる「面会」と考えていません。
それは、医師が必要として許可する「付き添い」です。
面会を制限するためには、たんなる「面会」と「立会いや付き添い」との違いを明確にする必要がありました。

そもそも感染に対して抵抗力があるとはいえない新生児がいる病棟に、たくさんの、とくに関係ない人が平気で入り込んでくること自体が問題なのです。
そして、それを制限できるのは、面会にくる人ではなくて、患者さん一人ひとりの受け止め方だけなのです。患者さん自身が病院の事情を理解し、それぞれの家族や友人に説明してもらわないと、面会制限なんてできません。

この面会禁止、面会制限にはうちのスタッフらも少なからず混乱がありました。
家族がいつも一緒で、生まれてくる赤ちゃんを迎えて欲しいという思いがスタッフの気持ちの根底にあったからです。

新型インフルエンザのほとぼりが冷めるまで、どれくらいの期間が必要かわかりませんが、もう少しの間、ご協力お願いします。

そういえば、一人だけ、この面会制限を大喜びした方がいたそうです。
入院中に姑さんに会いたくないという方で、この方は付き添い許可願に、だんなさんの名前だけを記入したそうです。
思いもよらないところで、面会制限が役に立ったようです。






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ニケ

わたしがお世話になった病院も、「ごく近しい方のみ、短時間でお願いします」と面会は制限している所でした(新型シンフル流行前からです)。
産婦さんができるだけ体を休め、入院中の妊婦さんが落ち着いて過ごせるように、ということで、赤ちゃんのお父さん以外はできるだけ退院後にしてね、というスタンスで入院するみんなに(母親学級などで)説明していました。
実際守っている方は全員ではなかったですが、それでもその言葉のおかげで静かに体を休められた一人です。

産婦人科病棟には他の人より気をつけて守るべき存在がいる、ということをたくさんの人に理解してもらえるといいですね。

by ニケ (2009-09-11 00:40) 

haru

ニケさん、コメントありがとうございます。
どれだけのお見舞いの人が来るかは、その患者さんによるところが大きいようです。
「お見舞い、来なくていいですよ。気を使うし。」って、さばさばして言える人は大丈夫ですね。
でも、たまにいらっしゃのですが、「個室料払ってるから文句ないやろ?」とばかりに、朝から晩まで、入院から退院まで面会時間を守らず、ずっと、べったり部屋にいる旦那さんを見ると、仕事もしないでどうやって育てていくんだろう?ってすこし心配します。
ま、おおきなお世話でしょうが。
これも、患者さん自身が、だんなさんにせめて面会時間を守るよういえば、ありえないことなのです。
by haru (2009-09-11 10:31) 

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