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きっと誰かの大切な命が救えるはず [産婦人科医]

臓器移植法案で、A案が可決されました。
http://www.asahi.com/politics/update/0619/TKY200906180454.html

景気対策がなによりも最重要課題とされる政治の中で、ボクはこの議題に注目していました。

 「たぶん、D案やろな・・・。」

新聞を読みながら、なんとなくボクはそう感じていました。
日本で臓器移植が可能になり、多くの大切な命が救われました。
ただ、現在の法律では、日本で子供の脳死の方からの臓器移植手術ができないのです。
(そういった中で、肝臓に関しては、生体肝移植が行われてきました。)
また、子供の心臓移植手術は海外に頼るしかなく、諸外国では日本からの移植手術を希望する患者さんによって自国で手術を受ける人が受けられなくなっているというのです。

今回の法案が通過したことで、多くの大切な命が救われるはずだと信じています。

ただ、そこには、往々にして暴走しがちな人間という動物に対して、節度というブレーキをかける何かが必要ではないかと思うのです。
A案では、(拒否がない限り)というひとことが付け加えられていますが、実際、自分の子供が臓器提供の対象になったとして、どれだけの親が「どうぞ臓器を使ってください。」といえるのでしょうか?
そこで、D案では、第3者の判定が加わるのです。

おそらく、D案に落ち着くだろうなと思っていたのですが、実際は、あっさり?とA案に決まったという印象でした。

しかしながら、A案に決まった時点で、もう一度考えてみました。

第3者が判定に加わることで、医療者が安心して治療できるようになると思っていましたが、もしかしたら、その逆もあるのではないか?と。
つまり、第3者が加わることで、かえって現場の医療者などの判断がぶれるかもしれません。
「第3者がああいってるから、やめよう。」
そういった可能性がないわけではありません。
人間なんですから。

もう一度、脳死そのものについても、みんなで考えるべきなのでしょう。
職場で話していても、みなさん、脳死についてほとんど知らないし、知ろうともしていません。
今回の法案通過には、まだまだ議論の余地はあるのでしょう。

臓器移植という治療では、そのために犠牲になる命があってはならない。
それは当然のことなのです。

しかしながら、この法案通過によって、きっと誰かの大切な命が救えるはずなのです。

命の数だけ、その誕生に関わった、産婦人科医や助産師がいて、
「頑張って生まれてきた命を大切にして欲しい。」という願いがあります。








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にゃみ

お返事ありがとうございますm(_ _)mharu先生は当直ではないとき、帰る派ですか?いる派ですか?当直じゃないときでも、主治医になった患者さんのお産は主治医がするものと思ってました。だから、激務で産婦人科医は少ないのかと思ってました。そうでは、ないんですね?産婦人科医はいつ休むんだろうと思ってました、倒れるんじゃないかと、確かに知ってる先生がいてくれた方が安心しますよね。
by にゃみ (2009-06-19 12:49) 

haru

にゃみさん、コメントありがとうございます。
ボクは、はっきりいって、「いる派」でした。
過去形なのです。
上司のボクが帰らないと、他の先生たちが帰れないので、最近は、泣くな泣く、「帰る派」になっています。
産婦人科医がほとんどいなかった数年前は、いる派が当たり前でしたが、最近はだいぶラクになってきました。
もちろん、なにかリスクがありそうなお産は残りますね。
母親教室で、「当直でもないのに、ボクが分娩室に何度も顔を見せるのは、逆に何か異常があるときかもしれません。」と説明しています。

by haru (2009-06-19 13:51) 

にゃみ

haru先生 お忙しいのに、お返事ありがとうございますm(_ _)m 確かに上の先生がいたら、帰れないようなきがします。だいたい入局何年目くらいで、一人でなんでもできるようになるんでしょうか?(一人前に) 個人差や病院によって違うと思いますが、だいたいの目安みたいなのを、お時間がよろしいときに教えてくだされば幸いですm(_ _)m お忙しいのに質問ばかりですいませんm(_ _)mペコリ
by にゃみ (2009-06-19 14:16) 

うそっきー

あぁ・・haruセンセイ・・・。 
私が アホ丸出しで 麻生、マンガについての記事を書いてるときに
センセイは こんなにも 素晴らしい記事を書いていらっしゃる。。。

撃沈。。。。。

脳死について、宿題出ましたからしっかり考えますね。



by うそっきー (2009-06-19 16:54) 

hamu5

臓器移植は必要としている方がいるので、必要なのでしょう。
それで、希望が持てるし、助かる命がある。
それは素晴しいこと。
でも、思うことは、脳死判定は絶対か・・
と言う1点だけです。
by hamu5 (2009-06-19 21:19) 

haru

うそっきーさん、コメントありがとうございます。
残念ながら、マンガにはあまり興味がないです。わはは。
「ブラックジャックを読んで、医者になりたくなった。」
などといって医学部に入る人もあるみたいですが。
ただ、メディアとしてのマンガがもつ可能性は無限大かもしれませんね。
麻生さんがどこまで考えてるのか知らないですけど。
by haru (2009-06-20 22:37) 

haru

hamu5さん、コメントありがとうございます。
脳死が話題になったのは、たしか、今から20年ちょっと位前ですかね?医学生だったボクらは、大学の授業の一環で、クラスメートと討論したことがあります。
自分の意見を主張するのが得意な学生は、マジメに考えている人の意見を、小さな矛盾点を指摘することでしたり顔になっていたことを覚えています。どちらも、正しいのでは?と聞きながら感じました。
ただ、医療の世界で「絶対」という言葉は存在しません。
脳死判定が絶対なんてことはないと思いますが、限りなく絶対に近づけ、大多数の人が納得することはできるのではないでしょうか?
「絶対」である脳死判定以外は決して受け入れられないのか、完全でなくても、その脳死判定を受け入れるしかないのか、ということになると思います。


by haru (2009-06-20 23:00) 

りょお

医学的なことはよくわかりませんが、臓器を提供する側にとっても、
される側にとっても、少しでもいいように変わっていけばいいと思います。
ただ、もし、自分のムスコが脳死の状態になったとき、
「臓器を使ってください」
と言えるかというと、言えない気がします。
どのラインが人の死なのか、難しいところだと思いますが、
心臓が止まるまでは! と思ってしまうのではないかと思います。
by りょお (2009-06-20 23:00) 

haru

りょおさん、コメントありがとうございます。
ボクも同じ立場なら、臓器提供できないと思います。
心情的な部分です。
ただ、それでは、助かる人が助からない。
そこを、法律が支えようとしているのでしょうね。
by haru (2009-06-20 23:11) 

haru

にゃみさん、コメントのお返事が遅くなりすいません。
産婦人科医が実際のところ、どうなのか、知る機会があります。
7月4日(土)に大阪ヒルトンホテルにて
「研修医。修練医のための産婦人科サマーセミナー2009」
某大学の関係病院を中心に若いドクターが集まります。
各病院のプレゼンもあります。
医学生が出られるのかわかりませんが、お近くなら聞いてみてください。
うちの病院もプレゼンします。
by haru (2009-06-21 10:46) 

にゃみ

haru先生、お忙しいのにお返事ありがとうございますm(_ _)m 見ず知らずなのに、色々教えて頂いてありがとうございますm(_ _)mすいませんですm(_ _)m わざわざかいて頂いたのに、たぶんむりだと思いますm(_ _)mこのようなイベント?もあるのですね、初めてしりました、ありがとうございますm(_ _)mヒルトンホテルいいところでしますね(*^o^*)行くことができれば、haru先生にも会えるかもですね?
by にゃみ (2009-06-21 16:55) 

ちばおハム

私もこの法案、どうなるのか、とみてました。
Aはないだろう、と思っていたらAが可決されてちょっとびっくりしました。
20年前は考えられなかった法案かな。
脳死は人の死なのか、ということが日本の倫理上否と捉えられていた時代だったような気がします。
救われる命がある一方、亡くなっている人がいるという現実、まずそのことを深く受け止めたいと思っています。

by ちばおハム (2009-06-21 23:52) 

haru

ちばおハムさん、コメントありがとうございます。
命が鼓動し、生まれ、産声をあげる・・・。
わかりやすい現場で働いているなって、しみじみ思います。
命の現場にいながら、人の死についてはわからないことが多いと思います。
by haru (2009-06-22 06:15) 

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