「なんか、おもしろい話、ある？」

ボクは、時々、職場でちょっとヒマそうな？ひとを見つけたら、
この質問をします。

部下でも、ナースでも、看護学生でも。

みんな、一瞬困ったような表情になってこう言います。

「そんな急に面白い話なんてできません。　先生じゃないんですから・・・。」
「今度、新しいネタ、仕入れときます。」

10回中、9回はこう答えが帰ってきます。
回答率は、意外と低いものです。

この質問、じつは、ある先生のパクリ（真似）なんです。
大学院生だったころ、研究でお世話になった先の、すごく気さくな教授です。
となりの教授室から、ボクたちが勉強している部屋にコーヒーを飲みにやってきて、
新聞読みながら、背中越しに声をかけてくるのです。

「なんか、おもしろい話、ある？」
　「いやー、今度出たベンツのオープンカー、あれ、かっこいいですね。」
「それじゃ、君、それ買って、すぐ飽きて、そのあと、僕に安く売ってよ。」
　「わかりました。わはは。」

車が大好きな先生だったので、研究がそれほど好きではなかったボクにとって、
車の話の方が楽しかったのです。

しかし、この質問、本当は深い質問なのです。
どんどん実験して、いろんなデータを出している人に対しては、

「なんか、新しいデータでた？」
「興味深い発見はあった？」

研究者として、じつに幅が広くて、深い、質問だったのです。

先生も十分にボクの研究者としての資質を見抜いておられたので、

「君は、研究で頑張るよりも、（産婦人科医として）臨床でどんどん稼いだほうがいいな。」

けっして褒められていないのは十分にわかっていても、
その先生に言われると妙に納得したものでした。

ボクが病棟などで、みんなにこの質問をするのは、日々、患者さんに接している仲間が、
どういう発見があり、それに対してどんな喜びを感じているかを知りたいからなのです。

仕事を通じて自分が感じた喜びやおどろきを言葉にすることで、
そのスタッフがどれくらい吸収しているか、手に取るようにわかります。
そして、なによりも、その人の人柄がわかります。

コメント 6

こんにちは～。
奥深い質問だったのですね。
最初の方を読んでいたら
絶対笑える鉄板ネタを数個必ず持ってるうちの旦那のような大阪人のことを語ってるのかしら～と思っちゃいました～(^_^;)。
by 牛すじカレー (2009-07-03 15:49) 

牛すじカレーさん、コメントありがとうございます。
大阪人の基本姿勢として、どんな話でも最後にちゃんとオチをつけます。
ちゃーんとツッコミを入れてもらえるようにね。
この禅問答のような質問に対して、うかつにボケをいれるとそれこそキツーイツッコミがきます。
かくいうボクも大阪人なので、苦労しました。
by haru (2009-07-03 17:48) 

イキナリ「面白い話」って言われても、困っちゃいますよね（笑）
でも、だからこそ、その反応で人柄が出ちゃうんでしょうね～。
日ごろから、いろんなアンテナを張って生活している人は、
いろいろ強いですよね。
人によって、「おもしろい」と思う事柄もだいぶ違いますしね。
いやはや、恐れ入りました（笑）
by りょお (2009-07-03 22:19) 

ははは、大阪人らしいやり取りですね。
職場でこんな風に聞かれたら関東人としては困るかも・・・

この教授もしゃれてますね。
そうか、ｈａｒｕさんは臨床むきですか（笑）
by ちばおハム (2009-07-04 14:36) 

りょおさん、コメントありがとうございます。
そうです。その人が、どんなことを面白いと思うかを知ることでその人のことを理解できます。
それをいかに自然に聞きだせるかというのも、上司の才能かもしれませんけれど。
by haru (2009-07-05 17:11) 

ちばおハムさん、コメントありがとうございます。
この教授は本当にシャレています。
最高のキャラです。
皮肉さえも超一流で、許せちゃいます。
もちろん、研究者としても、人間としても。
この人の観察だけで、ブログひとつ成り立つかもしれませんね。
ボクは、3度の飯よりも研究が好き、というより、3度の飯をきっちり食べて研究サボってましたから。
そんなカンジで、臨床むきなんです。

by haru (2009-07-05 17:17)