高くついた授業 [産婦人科医]
今年も、あっという間に半分が過ぎました。
6月は学会もあり、なにかと忙しかったです。
そんな中で、わりと時間的に負担になったのが、
助産師学校の授業です。
前にいた病院でも毎年15回ほど、看護学校の授業をしていたのですが、
今年は、大学の保健学科も含めて、2つの助産師学校の授業を頼まれました。
ボクが担当する講義の内容は、
分娩時合併症や産科手術、といったもので、
どちらかというと、
「お産の怖い部分」が主なテーマとなります。
限られた講義時間の中で、
ひとつひとつの疾患の一般論、その症状、必要な対応、そして、
実際にあった症例について次々話していきます。
そして、ついつい自分が今まで経験した症例についても、
身振り手振りで説明していきます。
そんななかで、
「子癇」について説明しました。
子癇とは、妊娠高血圧症のもっとも厳しい合併症の一つです。
「みなさんの中で、子癇発作みたことある人いる?」
「・・・・」
今年は手を挙げる人はいませんでした。
無理もないと思います。
「昔、ギネ、っていうドラマで、子癇発作出てたけど、覚えていない?」
「あぁ・・・。」
何人かが、小さく頷きました。
「じゃあ、一度だけ、ボクが子癇発作して見せるね。」
「・・・・」
教室内はしーん、としています。
強張った両手を、強く上下に揺らし、
その振幅を徐々に大きくさせながら、
白目をむいて、体を大きくのけぞらせます。
のけぞったことで、ボクは後頭部を強く、うしろのホワイトボードに打ち付けます。
あまりに大きな音がしたのでみんなあっけにとられています。
教室の後ろで一緒に講義を聴いていた助産科の先生は、
もちろん、子癇を見たことがあるので、
しかめた顔を小さく横に振っています。
あっけにとられている学生さんたちに、
ボクはこう付け加えました。
「皆さんが助産師として働いていく中で、おそらく、一度は見ると思います。 この子癇発作を見た瞬間に、皆さんがどれだけ冷静に対応できるか? いや、だれよりも冷静に対応しなければならいのが助産師です。 よく覚えておいてくださいね。」
ちょうど、講義の時間が終わったので、ボクは帰り支度をしました。
駐車場で、病棟の様子を聞くために病院に電話を掛けました。
なにもなければ、このまま直帰するつもりです。
電話しながら、何気なく腕時計を見ると、
なんと、
大切にしていた腕時計の、
文字盤の、数字の「6」が、
はずれて、「6」な感じになっているじゃありませんか?
(写真撮っとけばよかったと今になって思います)
不思議なことに、それ以外の異常はありません。
「わはは!」
頑張って講義しすぎました。
いやいや、
講義、頑張りすぎました。
子癇発作のマネで、どうやら激しく腕を振りすぎたようです。
時計屋さんに持っていくと、
修理期間が3か月といわれ、まだ修理はできていません。
修理代金はどれくらいなんでしょう?
いやぁ、この講義は高くつきました。
その後、2週間ほどしてもう一つの助産学校で講義をしました。
また、テーマは「子癇」です。
「みなさんの中で、子癇発作みたことある人いる?」
「・・・・」
ボクは、そっと、今使っている、もうひとつの腕時計をそっとはずして、
机の上におきました。
「じゃあ、一度だけ、ボクが子癇発作して見せるね。」
「・・・・」
時計がないと、腕をけいれんさせたときに、
ガチャガチャという音がしないので、
やはり、すこし物足りない気がしました。
伝えることは難しいと思いました。
6月は学会もあり、なにかと忙しかったです。
そんな中で、わりと時間的に負担になったのが、
助産師学校の授業です。
前にいた病院でも毎年15回ほど、看護学校の授業をしていたのですが、
今年は、大学の保健学科も含めて、2つの助産師学校の授業を頼まれました。
ボクが担当する講義の内容は、
分娩時合併症や産科手術、といったもので、
どちらかというと、
「お産の怖い部分」が主なテーマとなります。
限られた講義時間の中で、
ひとつひとつの疾患の一般論、その症状、必要な対応、そして、
実際にあった症例について次々話していきます。
そして、ついつい自分が今まで経験した症例についても、
身振り手振りで説明していきます。
そんななかで、
「子癇」について説明しました。
子癇とは、妊娠高血圧症のもっとも厳しい合併症の一つです。
「みなさんの中で、子癇発作みたことある人いる?」
「・・・・」
今年は手を挙げる人はいませんでした。
無理もないと思います。
「昔、ギネ、っていうドラマで、子癇発作出てたけど、覚えていない?」
「あぁ・・・。」
何人かが、小さく頷きました。
「じゃあ、一度だけ、ボクが子癇発作して見せるね。」
「・・・・」
教室内はしーん、としています。
強張った両手を、強く上下に揺らし、
その振幅を徐々に大きくさせながら、
白目をむいて、体を大きくのけぞらせます。
のけぞったことで、ボクは後頭部を強く、うしろのホワイトボードに打ち付けます。
あまりに大きな音がしたのでみんなあっけにとられています。
教室の後ろで一緒に講義を聴いていた助産科の先生は、
もちろん、子癇を見たことがあるので、
しかめた顔を小さく横に振っています。
あっけにとられている学生さんたちに、
ボクはこう付け加えました。
「皆さんが助産師として働いていく中で、おそらく、一度は見ると思います。 この子癇発作を見た瞬間に、皆さんがどれだけ冷静に対応できるか? いや、だれよりも冷静に対応しなければならいのが助産師です。 よく覚えておいてくださいね。」
ちょうど、講義の時間が終わったので、ボクは帰り支度をしました。
駐車場で、病棟の様子を聞くために病院に電話を掛けました。
なにもなければ、このまま直帰するつもりです。
電話しながら、何気なく腕時計を見ると、
なんと、
大切にしていた腕時計の、
文字盤の、数字の「6」が、
はずれて、「6」な感じになっているじゃありませんか?
(写真撮っとけばよかったと今になって思います)
不思議なことに、それ以外の異常はありません。
「わはは!」
頑張って講義しすぎました。
いやいや、
講義、頑張りすぎました。
子癇発作のマネで、どうやら激しく腕を振りすぎたようです。
時計屋さんに持っていくと、
修理期間が3か月といわれ、まだ修理はできていません。
修理代金はどれくらいなんでしょう?
いやぁ、この講義は高くつきました。
その後、2週間ほどしてもう一つの助産学校で講義をしました。
また、テーマは「子癇」です。
「みなさんの中で、子癇発作みたことある人いる?」
「・・・・」
ボクは、そっと、今使っている、もうひとつの腕時計をそっとはずして、
机の上におきました。
「じゃあ、一度だけ、ボクが子癇発作して見せるね。」
「・・・・」
時計がないと、腕をけいれんさせたときに、
ガチャガチャという音がしないので、
やはり、すこし物足りない気がしました。
伝えることは難しいと思いました。
はじめまして。28週の妊婦です。昨日夜、妊娠の経過で不安になり、パソコンで検索をしていて、ブログを拝見させていただきました。毎週出血するので近くの産婦人科に通院しています。便秘→腹痛、胃痛→下痢→子宮口付近
からの出血を繰り返して、2ヶ月。産婦人科の先生は、経過は心配ないと言わ
れますが、不安な毎日。明日、県立病
院の消化器科、産婦人科を受診してみ
ようと思っています。大きな病院のほ
うが、安心感があるのですが、なかな
かかかりつけの産婦人科の先生にはお
話しづらくて。先生のブログを拝見し
て、とても心をうたれたのは、妊娠という生理現象を、自然の流れとして、あせらず、冷静に、そして優しく見守ることの大切さ…涙がながれました。
もう少しがんばって、乗り切ろうとおもいます。
by ゆう (2012-07-01 12:11)
子癇発作、私も見たことありません。
妊娠したときに、詳しく知ったという落第看護婦です・・・
haruさんの授業が、助産師さんの卵さんたちに届くといいなあ、と思います。きっと現場で(ああ、これだ!)と思うはず。(決して不謹慎な気持ちでではありません。コメントが不愉快になる方がいたらごめんなさい)
それが、若い人たちの励みになるんですよね。
指導って難しいですね。
by ちばおハム (2012-07-03 16:37)
こんにちは。
私は今日やっとのことで37週になる妊婦です。
今日診察があり、体重が結局12キロくらい増えてしまったので、妊娠高血圧症とか注意とかいわれましたが、実感わかずで昼食がっつり食べてしまいました。
うちの先生、子癇発作とか具体例言ってくれたら、こんなに食べなかったのに。。。とか思います。
いまのとこ子宮口2センチあいてて、まだ赤ちゃん降りてきてないといってたので、7月第1週のはじめの大潮には生まれなさそうです。
第3週位の大潮の頃になるかな。と思ってます。
いつ生まれるかどきどきです。
先生もお忙しいと思いますが、ブログ頑張ってくださいね~。
by clover (2012-07-03 17:14)
いつもブログを拝見しております。
私は21週で前期破水し、もうすぐ24週で入院中です。幸い感染もなく絶対安静の毎日です。
毎日赤ちゃんの命と向き合い、前向きにならなきゃと思ったり涙にくれてしまったり、気持ちが安定しません。
今回周産期センターに転院した為、先生ともまだ分かり合えず不安も口に出せません。
先生はこれまでにも私のような妊婦さんを診た事がおありではないかと思い、どんな気持ちで頑張ればいいのかを教えて頂きたいのです。
恐怖心と戦うにはどうしたらいいのでしょうか?
突然のコメント失礼致しました。
by えったん (2012-07-04 17:49)
はじめまして。
時々おじゃまさせて頂いていました。
今年の1月に3人目を出産しましたが、予定日の1ヶ月半前に、
妊娠高血圧症候群と診断され、救急搬送で入院しました
いつ子癇発作が起こるかもしれない、死ぬかもしれないという恐怖と
毎日闘っていました。
先生から子癇含め、合併症のことを細かく聞かされていましたので・・・
赤ちゃんが元気に産まれてくれて、自分も無事に退院できたこと、
今でも感謝しています。
子癇発作って本当に怖いのですね。
by ゆりこ (2012-07-04 18:04)
初めて聞きました((((゜д゜;))))私は、産後直後から、血圧が高くなりやすく、心配です(;_;)
今は落ち着いていて、服薬もないですが、妊娠したら高くなりそう
((((゜д゜;))))主治医は、なんとかなるよ~とか言っていますが…
でも、赤ちゃんが欲しいですヾ(≧∇≦)ベビーラッシュになんとか、乗りたいんだけど、あれこれ考えてしまって…
by NO NAME (2012-07-09 07:17)
上のコメントに名前を書くのを忘れました
m(_ _)mごめんなさいm(_ _)m まなみんままです。
haruさん、お体大切に、お仕事頑張ってくださいね(^^)/
by まなみんまま (2012-07-09 07:26)
いつも拝読させてもらっています。
先生にお世話になった我が子も、早いもので来月で1歳になります。
最近はパパ、うんうん、いたいいたい(笑)など言葉がたくさん出てきています。
一人目はかなりの高血圧で、子癇というそんな激しい発作になっていてもおかしくなかったのかと思うと、今こうして2人目を授かり、元気に過ごせていることが益々感謝です。
by みう (2012-07-11 14:07)
あたしは今、中3です!
んで、
産婦人科の先生になることが
将来の夢なんですっ (> <*)
お仕事、頑張ってください!
あたしもいつか産婦人科の先生なって
お仕事できるよーに頑張ります!!!
by すぅ (2012-07-12 19:54)
ゆうさん、コメントありがとうございます。
出血はいかがでしょうか?
大きな病院には大きな病院なりの安心感もあれば、医療者と患者の距離感などの不安感もあると思います。
もちろん、その逆もあると思います。
そういった医療施設の性格の違いがあるのはとうぜんでもあり、その違いをうまく埋めて、最良の医療を提供、あるいは提案していけるのが本当の意味のかかりつけ医ではないかと思います。医学のみならず、「その先生が何を得意としているか?」ということを知っていることも、ドクターとして大切な勉強だと思います。」
by haru (2012-07-14 11:59)
ちばおハムさん、コメントありがとうございます。
子癇の本当の怖さは、発作そのものではなく、それに遭遇(?)したときの、自分の状況がどんなであるか、を想うときです。
たとえば、今ボクがいるような大病院では、それほど怖くありません。いつでも、多くのスタッフが集まり、迅速な対応が可能です。
反対に、個人開業医や前にボクは働いていた病院ような小規模病院では、産婦人科はさておき、脳外科や神経内科などの診療科のドクターがいるとは限りません。
怖さだけを教えるのではなくて、その時の助産師としてのパフォーマンスに何を求められるかも教えないといけないと感じています。
by haru (2012-07-14 12:13)
cloverさん、コメントありがとうございます。
もうお産になりましたか?
12キロなんて、普通ですよ。
大丈夫。
それより、しっかり歩いたほうがいいと思います。
歩いた人は、やはり、いいお産になることが多いように思います。
by haru (2012-07-14 12:20)
えったんさん、コメントありがとうございます。
同じような状況の患者さん、これまでもたくさん担当してきました。
その、不安の大きさと言ったら、言葉では言い表せないと思います。
恐怖心と戦う方法は、ボクにはわかりませんが、いろんなことを赤ちゃんに話しかけてあげてください。
お腹の中で動いている赤ちゃんと、一緒に過ごす大切な時間だと思います。
この時間は、本当に大切な時間です。
by haru (2012-07-14 13:17)
ゆりこさん、コメントありがとうございます。
妊娠高血圧症で運ばれるとき、不安だったでしょう。
担当された先生から、きっといろんな怖い話をされたことでしょう。
怖い話をされて、納得されたから、頑張れたんだと思います。
恐怖心に勝てたのは、きっとかわいい赤ちゃんに会いたいという思いだったのではないでしょうか?
母は強し、とも言えるでしょう。
by haru (2012-07-14 18:30)
まなみんままさん、コメントありがとうございます。
担当した先生が、次の妊娠で血圧上がっても、なんとかなるよ、って気軽に言える程度であればそれほど問題なんいんでしょうね。
本当に怖い思いをしたひとには、「次の妊娠、頑張ってね。」とはなかなか言えないものです。
ダメだ、とも言えないので、「無理しないで。」とか、「何が一番大切かじっくり考えてください。」とか、そういういい方になってしまうものです。
by haru (2012-07-15 11:29)
みうさん、コメントありがとうございます。
お久しぶりです。
去年のちょうど今頃に、新しい病院に移ることが決まり、仕事をしていても、なんとなくそわそわしていた時期です。
前回の妊娠で血圧が高くなったといっても、実際に次の妊娠では血圧が高くなるとは限らないので、じっくり診ていくしかないんですね。
何はともあれ、皆さんがお元気そうで何よりです。
by haru (2012-07-15 11:33)
すぅさん、コメントありがとうございます。
中学3年生のころといえば、ボクは英語の先生になりたかったです。
単語一つ一つの意味を調べて、主語、述語、目的語などを並べていくと、文章が出来上がるのです。英語を書いた人たちがどんなことを考えているかを知るのにハマッていました。
こんなに楽しいことを仕事にできたらハッピーだろうと思ったのです。
今から、産婦人科医になろうと思って、それを成し遂げることができたら、きっとすごいと思います。
頑張ってください。
by haru (2012-07-15 11:43)