長い付き合い [分娩]
今日お産をした方は、実に付き合いの長い方です。
かれこれ7年間の付き合いです。
はきはきした、明るい印象の方です。
一度スーパーでばったり会ったのですが、
大きな声で、「せんせー!」って、手を振ってくれる感じです。
7年前に不妊治療を希望して初めてうちの病院にきて、
排卵誘発やタイミング療法でやっと妊娠。
1人目の妊娠中に切迫早産になり、
1ヶ月間の入院生活。
お産の時は、自然分娩でしたが、
出血が多く、
2500mLで、輸血直前でした。
夜中のお産だったので、ボクは立ち会えなかったのですが、
次の朝、分娩室で横たわっているこの方の顔色をみて、
「白ッ!」
って、言ってしまいました。
のちのち、
「先生に『白ッ』っていわれた。」と、
初めてのお産の時のことを振り返り、
何度となく責められました。
2人目の妊娠は、そのあと、3年ほどして、
排卵誘発とタイミング療法で妊娠。
今度は順調に経過して、
そして、またまたお産の時の出血が多くて、
2000mL近くでした。
やはり、この時もボクが当直ではない夜中のお産で、
ボクはお産に立ち会えなかったのですが、
「前よりはマシ」、と、元気そうでした。
「どうしても女の子が欲しい!」
かわいい男の子を2人も生んだら十分だとは思うのですが、
産み分け方法を勉強しつつ、
3人目は自然妊娠でした。
タイミング療法では、男の子が出来やすい、という信念のもと、
根性の自然妊娠でした。
いつも明るいこの方の健診では、
性別が最重要項目になっていました。
「赤ちゃん、女の子みたいや。」
「本当ですかぁ?」
「多分・・・。」
「多分、ってどういうことですかー?」
いつも楽しい健診でした。
そして、臨月の入り、
そろそろお産の話題になると、
「先生に『白ッ』っていわれた。」と、
またまた、
責められたワケです。
そして、
今朝早く、陣痛がきて入院になりました。
前のお産は2回とも夜中で、ボクはいなかったのですが、
今度は当直でした。
でも、診察すると、
もう少し時間がかかりそうで、
お産はボクが外来診療中になりそうでした。
「出血多いかもしれないから、準備をしておこう。」
子宮収縮剤や、ショックになったときの点滴や薬をひと通り
準備しておくように助産師さんに指示しました。
「緊張しますねー」
助産師さんも気合が入ります。
外来診療しながら、この方の分娩監視装置のモニターを見て、
あるとき、
胎児の心音の線が途絶えました。
「おーっ、生まれた生まれた。」
心のなかでガッツポーズ。
すぐに、病棟担当のドクターが報告に来てくれました。
出血は、700mLほどとのこと。
母児ともに健康でした。
外来が終わって、
分娩室で休んでいるところに、顔を見に行きました。
「お疲れさま。 また、立ち会えなかったね。」
「いいんです。 何かあったら、先生が絶対飛んで来てくれるって思うだけで安心でした。」
「昼間にお産する、って安心ですよね。」
「出血が少なくて何よりですね。」
「それより、下の子が、赤ちゃんが生まれる直前に、『ウンチ!』って、それどころじゃなかったのが笑えました。」
「わはは。」
上のお子さんたちも立ち会って、家族全員の、思い通りのいいお産だった、と喜んでくれました。
あくまでも明るい、この方らしいお産でした。
そういえば、7年間も、不妊治療や子宮癌検診なんかも含めて、
ずっとボクが主治医だったから、ボクの診察の待ち時間に、
ボクが突然分娩室めがけて全速力で走っていくのを
何度となく見ていたのだと思うのです。
外来診察の待ち時間がどんなに長くなってしまっても、
絶対嫌な顔せず、許してくれてました。
「自分がお産で何かあったら、先生はあんな感じで走ってくるんや。」
と見ていてくれたのかもしれません。
「ボクが来ない、っていうことは『安産』っていうことかもしれないね。」
「そうなんです。先生がすぐそこにいる、っていうだけで十分でした。」
使わずに済んだ、点滴や薬が片づけられるのを見ながら話しました。
結局、3人産んで出た出血は、トータルで人間1人分くらいになりました。
一度にそれだけ出血したら、多分お母さんの命は保証できないでしょう。
命がけでお産をするこの方は、多分、
ボクや、うちの病棟のスタッフを本当に信頼してくれていたのだと思います。
この目に見えない信頼関係がなければ、
きっと3人目を産もうと思わなかったかもしれません。
1回目と2回目のお産で出血が多くて、本当はすごく怖かったと思うのですが、
今回のお産で、これまでお産のネガティブはイメージが払拭されるように祈るばかりです。
かれこれ7年間の付き合いです。
はきはきした、明るい印象の方です。
一度スーパーでばったり会ったのですが、
大きな声で、「せんせー!」って、手を振ってくれる感じです。
7年前に不妊治療を希望して初めてうちの病院にきて、
排卵誘発やタイミング療法でやっと妊娠。
1人目の妊娠中に切迫早産になり、
1ヶ月間の入院生活。
お産の時は、自然分娩でしたが、
出血が多く、
2500mLで、輸血直前でした。
夜中のお産だったので、ボクは立ち会えなかったのですが、
次の朝、分娩室で横たわっているこの方の顔色をみて、
「白ッ!」
って、言ってしまいました。
のちのち、
「先生に『白ッ』っていわれた。」と、
初めてのお産の時のことを振り返り、
何度となく責められました。
2人目の妊娠は、そのあと、3年ほどして、
排卵誘発とタイミング療法で妊娠。
今度は順調に経過して、
そして、またまたお産の時の出血が多くて、
2000mL近くでした。
やはり、この時もボクが当直ではない夜中のお産で、
ボクはお産に立ち会えなかったのですが、
「前よりはマシ」、と、元気そうでした。
「どうしても女の子が欲しい!」
かわいい男の子を2人も生んだら十分だとは思うのですが、
産み分け方法を勉強しつつ、
3人目は自然妊娠でした。
タイミング療法では、男の子が出来やすい、という信念のもと、
根性の自然妊娠でした。
いつも明るいこの方の健診では、
性別が最重要項目になっていました。
「赤ちゃん、女の子みたいや。」
「本当ですかぁ?」
「多分・・・。」
「多分、ってどういうことですかー?」
いつも楽しい健診でした。
そして、臨月の入り、
そろそろお産の話題になると、
「先生に『白ッ』っていわれた。」と、
またまた、
責められたワケです。
そして、
今朝早く、陣痛がきて入院になりました。
前のお産は2回とも夜中で、ボクはいなかったのですが、
今度は当直でした。
でも、診察すると、
もう少し時間がかかりそうで、
お産はボクが外来診療中になりそうでした。
「出血多いかもしれないから、準備をしておこう。」
子宮収縮剤や、ショックになったときの点滴や薬をひと通り
準備しておくように助産師さんに指示しました。
「緊張しますねー」
助産師さんも気合が入ります。
外来診療しながら、この方の分娩監視装置のモニターを見て、
あるとき、
胎児の心音の線が途絶えました。
「おーっ、生まれた生まれた。」
心のなかでガッツポーズ。
すぐに、病棟担当のドクターが報告に来てくれました。
出血は、700mLほどとのこと。
母児ともに健康でした。
外来が終わって、
分娩室で休んでいるところに、顔を見に行きました。
「お疲れさま。 また、立ち会えなかったね。」
「いいんです。 何かあったら、先生が絶対飛んで来てくれるって思うだけで安心でした。」
「昼間にお産する、って安心ですよね。」
「出血が少なくて何よりですね。」
「それより、下の子が、赤ちゃんが生まれる直前に、『ウンチ!』って、それどころじゃなかったのが笑えました。」
「わはは。」
上のお子さんたちも立ち会って、家族全員の、思い通りのいいお産だった、と喜んでくれました。
あくまでも明るい、この方らしいお産でした。
そういえば、7年間も、不妊治療や子宮癌検診なんかも含めて、
ずっとボクが主治医だったから、ボクの診察の待ち時間に、
ボクが突然分娩室めがけて全速力で走っていくのを
何度となく見ていたのだと思うのです。
外来診察の待ち時間がどんなに長くなってしまっても、
絶対嫌な顔せず、許してくれてました。
「自分がお産で何かあったら、先生はあんな感じで走ってくるんや。」
と見ていてくれたのかもしれません。
「ボクが来ない、っていうことは『安産』っていうことかもしれないね。」
「そうなんです。先生がすぐそこにいる、っていうだけで十分でした。」
使わずに済んだ、点滴や薬が片づけられるのを見ながら話しました。
結局、3人産んで出た出血は、トータルで人間1人分くらいになりました。
一度にそれだけ出血したら、多分お母さんの命は保証できないでしょう。
命がけでお産をするこの方は、多分、
ボクや、うちの病棟のスタッフを本当に信頼してくれていたのだと思います。
この目に見えない信頼関係がなければ、
きっと3人目を産もうと思わなかったかもしれません。
1回目と2回目のお産で出血が多くて、本当はすごく怖かったと思うのですが、
今回のお産で、これまでお産のネガティブはイメージが払拭されるように祈るばかりです。
分かる気がします。私も双子を出産しましたが『いつか3人目がほしい』と思っています…欲を言えば、一生のうち何度かしかないお産を次こそは良い思い出にしたいと思ってしまいます。
最近やっと心筋症が快方へ向かい、私にも少しだけ希望が見えてきました!
先生もお体大切に。
by きらきら (2011-02-25 23:07)
おめでとうございます!!
うれしいだろうなあ。想像するだけでニコニコしてしまいます。
わたしも3人目ほしいなあ。
あやかりあやかり!!
2500の出血、2000の出血、ほんとにドキドキだったと思いますが、何事もなく、(といっても700も結構多いですよね)無事出産、おめでとうございます。
by ちばおハム (2011-02-26 15:00)
きらきらさん、コメントありがとうございます。
次こそは良い思い出にしたい、という方は多いと思います。
自分のイメージ通りではなかったことが大きな理由ではあると思います。
イメージ通りのお産をすることは大切ですが、
むしろ、「前回のお産の反省点や不安であった点を克服するお産」であって欲しいと思います。
by haru (2011-02-27 10:27)
ちばおハムさん、コメントありがとうございます。
今回のお産では、あらかじめ貧血の治療薬を飲んでもらっていたので、700mL程度の出血では、まったく貧血になりませんでした。
めちゃめちゃピンク色の顔です。
by haru (2011-02-27 10:29)
「お産をよい思い出に」
すごくステキですね。
私は2回のお産がどれも長期入院が必要で、辛くて辛くてもうお産はこりごりです。
次女出産から1年以上たった今でも、お産のこと思い出すのがつらいし、出産した病院にも足がすくんでいけないんです。
妊婦さん見かけるたびに、なんともいえない複雑な気分になります。
お体たいせつに、元気な赤ちゃん取り上げてくださいね。
by ホルホル (2011-02-28 09:31)
長い付き合いということは先生の人柄もあるんじゃないかと思いました
私も病院通いをしていますが、病院は処方箋でしか取り扱ってない薬を出す、治療だけではないと思うんです
身体だけでなく、心も元気になれる…
by Mari (2011-03-03 20:59)
ホルホルさん、コメントありがとうございます。
大変な妊娠経過や分娩であればあるほど、
大げさかもしれないすが、「こころのケア」が必要だと感じることがあります。
産後の入院中から、1か月健診までに、つらかったことなどを聞くようにしています。
言葉にして、表現するだけでも、癒されることがあるからです。
by haru (2011-03-07 08:04)
Mariさん、コメントありがとうございます。
診察や検査、処方だけじゃない部分がしめる割合は大きいと考えています。
十分な説明、先の見通し、そして、しんどいと感じていることは何か?
時間はかかりますが、手を抜けない大切な部分です。
by haru (2011-03-07 08:08)