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17歳の妊婦さん [妊娠]

年末年始の大忙しがまだまだ続いています。
そろそろ冬の学会シーズンも始まるので、日ごろの診療以外に週末の会合の予定もあり、気が休まるヒマがありません。

妊婦健診をうける妊婦さん以外に、風邪を引いた妊婦さん、年末に妊娠反応がでたけど休みだったのでやっと診察にこられた方、お正月の里帰りを兼ねて里帰り出産の予約にこられた妊婦さん、予約外の患者さんも多くて、外来はあふれかえっています。

ボクがとりあげたお子さんを連れて、
「こんなに大きくなりました。 今回もよろしくお願いします。」
家族でぞろぞろと登場です。

そんな、にぎやかな外来に一人の妊婦さんが受診されました。

まだ、17歳の妊婦さんでした。

ボク以外のドクターが何回か診察しているのですが、超音波でみる胎児の大きさと妊娠週数が合っていません。
 「あれれ? ちょっと大きすぎない?」

妊娠26週ということなのですが、28週の大きさです。
カルテをもう一度調べると、前回の診察で、胎児が小さすぎると、その週数の大きさに合わせて妊娠週数の修正がされていました。
どうやら思い切って、もともとの予定日よりも3週間あとに修正したようなのですが、さらにその前2回の健診のときの超音波での結果と照らし合わせてみて、修正は2週間くらいでよかったようです。

うちの病院に初めて受診したのが妊娠18週から20週ごろだったので、こういうことがおこったようです。
ふつう、最終月経がよくわからなかったり、もともと月経不順があったりすると、胎児のサイズで妊娠週数(つまり出産予定日)を決定しますが、これもせいぜい妊娠12週までに決めないと、あとになればなるほど誤差が大きくなってしまいます。

まあ、そんなに神経質にならなくても、なにより胎児は元気です。
羊水も十分だし、よく動いています。順調に発育もしています。

 「〇〇さん、申し訳ないのですが、もう一度予定日を修正するかもしれません。 次の診察の時、もう一度超音波で見てから最終的に決めたいのですが・・・。」

「はい。わかりました。」

 「初期のうちにしっかり診察して決めておかないといけなかったですが。」

今までの超音波検査のデータを紙に書いて、分かりやすく説明しました。
胎児の成長を調べるのに、頭部の幅や大腿骨の長さを調べます。
この赤ちゃんは、頭が少し小さめで、足がかなり長めだったので、どちらを優先するかで週数は変わってきます。
じつに悩ましいところです。

「すいません。 私がまじめに健診に来なかったから。」

妊娠のごく初期に、近くの産院を受診し、まだ胎児が小さな時期にだいたいの予定を決められたまま、それを胎児の大きさで修正することなくどんどん妊娠が経過したのです。
頭が小さめだけど、足が週数相当だね・・などなどで。

 「それにしても、17歳なんですね。こうして話してても、あんまりしっかりしてるから、カルテの年齢見なければ17歳なんて気付かないですよ。」

この方と少し話していると、不思議な感覚になりました。
顔と話す内容に違和感があります。

妊娠がわかって、どうしようかと考える時期があったのだそうです。
高校にも通っていたし、ご両親や学校の先生とも今後のことについて相談していたというのです。
それで、妊娠が判って、健診をしばらく受けなかった時期があったのです。

「結局、学校も、親も、頑張ってお産しなさい、といってくれたんです。 学校も何とかなるって。」

 「妊娠したら、みんなに叱られると思ってたんじゃない?」

「はい・・。」

 「意外と、みんな、優しかったでしょう?」

「そうなんです。 びっくりしました。」

イメージ的には、若い子(特に学生さん)が妊娠すると、親がびっくりして、カレシが親にどつかれて、カレシの親は平謝り、本人は泣きじゃくる・・・なんて図が想像しやすいと思います。
でも、もともと日本の風土として、妊娠をめでたいこととして喜び、それを新しい家族の絆として受け入れることがあります。
初産婦さんの4割がいわゆる「できちゃった」というデータがあると聞いたことがあります。
つまり、妊娠→結婚という順番です。妊娠中に入籍して産むまでに姓が変わるなんてことはよくあることです。
そして、妊娠が判ると、叱られるどころか、周囲のみんなは自分が思ってた以上に、喜んでくれたり、励ましてくれたりするものです。

ただ、この若い妊婦さんの場合は、この方自身が本当にしっかりしていて、妊娠しても、結婚してもちゃんとしっかり、勉強も子育てもしてくれるだろうという安心感があります。
そういう部分を周囲の人が判っているからこそ、応援してくれたのではないでしょうか?

妊娠や出産は頑張れば何とかなるでしょう。でも、子育てになると、1人でなにもかも頑張るのは大変でしょう。
旦那さんや周囲の人がサポートしてくれないとしんどいでしょう。

「姉がいて、同じようにお産をしてるんで、いろいろ教えてもらっています。」

ボクの心配をよそに、すでに産んだ後のこともしっかりと考えているようでした。

お正月ボケと忙しくてフラフラになってるボクを、なぜかすごくさわやかな気持ちにさせてくれました。
こういう人は、お産が終わってからもどんどんオトナになっていくんだと思います。

 「17歳の時、ボクってなにしてたっけ?」

自分と比べようとしたけれど、ほとんど記憶がないので、きっとなんにもしてなかったのでしょうね。
おととい食べた晩御飯も時々思い出せないので仕方がないかもしれませんが。



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さうざんバー

お正月明けの診察、お疲れ様でした(^^)

最近の傾向ですかね?
10代の妊婦で”自分が産みたい”と思った人程、しっかりしていて、産前産後の事、育児、ライフプランを考えているように感じます(^^)
私も17歳の時は、何をしてたんでしょう・・・(??;)思い出せません(^^;)
by さうざんバー (2010-01-10 20:26) 

みっくんママ

凄く自分と言うのがしっかりされている方ですね^^
読んでいて自分の子供達も、
同じようになって欲しいなと思いました。

by みっくんママ (2010-01-10 20:30) 

ちばおハム

しっかりしたお母さんなんですね。
自分は17歳の頃は受験でした・・・
まあ、人それぞれ、悔いのない歩みをしていけばいいと思います。
(自分の17歳はそれはそれで精一杯でした。)

お母さんになれば、みんないっしょ。責任ある親として一緒にがんばりましょうね。(ってきこえないか)
by ちばおハム (2010-01-11 14:30) 

haru

さうざんバー さん、コメントありがとうございます。
母親になるにはそれなりの人格的な成熟が必要だとは思いますが、妊娠、出産を経て、子供が親を親として育てるのだとも思います。
まずは、母子ともに健康でお産を終えてもらいたいです。
すべてはそこから始まります。
by haru (2010-01-12 09:11) 

haru

みっくんママ さん、コメントありがとうございます。
そうなんです、こういう方を診察していると、自分の娘のように(娘はいませんが)思えたりするのです。
ただ、かわいいから、と気安く子供を産むのではなくて、命の大切さを知ったうえで、大切に育ててほしいです。
by haru (2010-01-12 09:14) 

haru

ちばおハムさん、コメントありがとうございます。
この方は、なんとなくですが、周囲の人を味方につける雰囲気があるように思います。
しかし、親になった瞬間の、あの喩えようのない責任感を、この方も味わうのかと思うと、「若すぎる」印象は否定できないかもしれません。
・・・ボクの17歳も受験でした。
登山が趣味だったのですが、なかなか行けないので、部屋の中ででかい登山靴をはいて機嫌良く勉強してたら、親に見つかり、「アホか。」と叱られたのを思い出しました。
せいぜいその程度の思い出です。

by haru (2010-01-12 09:24) 

あや☆

はじめまして。私は産婦人科医を目指す中学1年生です。
産婦人科は労働条件が過酷である上、訴訟率が高いとお聞きしていますが、そんな中で働く先生方は、素晴らしいと尊敬しています。
そこでお聞きしたいのですが、私は体が弱く、よく風邪をひいてしまいます。また、貧血で倒れたこともあります。そして、私自身、子供が大好きなので、大人になったら、出産したいと思っています。
こんな私でも、産婦人科医になれますか?
また、産婦人科医になっても、子育てはできますか?
私が産婦人科医になるのは、難しいでしょうか?
けれど私は、産婦人科医になりたいです!!
1人の女性として、たくさんの女性を助けてあげたいし、新しい命を取り上げたいんです!!
お答えいただけたら、恐縮です。
これからもがんばってください。
by あや☆ (2010-01-12 23:36) 

haru

あや☆さん、コメントありがとうございます。
体力的に自信がなくても、子育てをしながらでも、勉強することはできます。
情熱があれば、産婦人科医にはなれるでしょう。
安心して仕事を続けることができるような環境を整えるために、今、多くの産婦人科の先輩たちが頑張っています。
あと10年もすれば、産婦人科医の半分以上は女性になるはずです。もっと働きやすくなっているはずです。
また、産婦人科もチーム医療なので、自分ひとりで頑張るなんて所詮はできません。
体力的に負担が少ないポジションもあります。
「みんなと力を合わせたらどこまでできるか」というスタンスでいることが大切ですよね。
頑張ってください。
by haru (2010-01-17 10:08) 

まゆ

こんばんは
初めてコメントします。
今日妊娠検査を薬局で買って確認しました
そしたら 陽性反応がでたんです。
自分はまだ17歳で高校は中退してます。
彼氏は25歳で同棲してます。
今さっき検査したのでまだ言っていませんが
すごく不安です。
前から妊娠したら って話をしてて
ちゃんと生もうって言ってくれてたのですが
やっぱり不安なんです
自分がしっかり育てられるか
周りからしていい印象はないと思います
最近は若いお母さんもたくさんいますが
怖いんです。
自分は弱いのにちゃんと守っていけるか
明日もう一回検査して陽性反応がでたら
産婦人科にいってみようと思います。
こんなコメントしてすみません。
ほんとは幸せなはずなのに・・・
by まゆ (2012-11-10 19:12) 

haru

まゆさん、コメントありがとうございます。
不安でしょう。
でも、同棲して、避妊していなかったら、いずれ妊娠することは予想できていましたよね。
妊娠は、自分自身だけでなく、彼氏に対しても、人生の一大事です。
そしてなによりも今、命の重さを感じていることでしょう。
命の重さと、妊娠出産に対する不安にびっくりしたのだと思います。
彼氏と一緒にがんばってください。
新しい命は、たくさんのことを教えてくれます。
それに、家族ができることは本当に幸せです。
by haru (2012-11-12 00:30) 

愛


17歳です。
高校三年の年ですが中退しています。

まだ検査薬の段階ですが、陽性反応がでました!
彼氏がほんとにほんとに喜んでくれて、
病院いかなきゃーーって騒いでで(笑)


命の重さ、母になるという感覚

初めての感情に、嬉しくて涙が出ました

そんなとき、この記事を読んで
私も頑張ろう、って凄く思いました。


by 愛 (2013-06-24 14:06) 

haru

愛さん、コメントありがとうございます。
新しい命が宿ったことを知った瞬間、きっとうれしかったと思います。
同時に命の重さにも気づいたという言葉に、ボクはほっとしました。
ぜひ、元気な赤ちゃんを産んで、大切に、大切に育ててください。
お産に関わる、すべての医療者の想いです。
by haru (2013-07-05 15:16) 

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