叱られました・・・ [分娩]
先日、一つのお産がありました。
初産婦さんで、朝から陣痛が始まり入院となり、少しずつ進行してきました。
夕方、5時頃に子宮口が8センチメートルまで開大し、うまくいけばあと1、2時間くらいで生まれるはず。
「あと少し。 がんばりましょう。」
そう励ましながら、産婦人科医はじっと待つしかありません。
7時半には子宮口が全開大。破水もしました。
「いいカンジや。 8時過ぎには生まれるな。 『チームバチスタの栄光』、見れるやん。」
などと鼻歌交じりで待っていました。
そしたら、そのあと、いくら待っても進んでこないのです。
夜11時まで待って診察したら、まだまだ時間がかかりそうでした。
原因はどうやら微弱陣痛です。
「先生、すいません。 こんな時間までかかってしまって・・・。 先生も大変ですねぇ。」
「ボクは大丈夫ですよ。 たしかにちょっと時間がかかってるけど・・。 わはは。」
ボクの事を気にかけてくれるくらい本人は元気で、モニターでは赤ちゃんもすこぶる元気です。
こういう状況では、陣痛促進剤をつかって陣痛を強くしてあげるのことが多く、ボクはそれも考えました。
しかし、この方は大きめの子宮筋腫もあり、変に手を出しちゃうと裏目に出ることもあると思いました。
それに、今、促進剤を使っても効いてくるのに2、3時間はかかるだろうし、無理に真夜中にしなくてもよいのではと考えたからです。
「お母さんも赤ちゃんも元気だし、もう少し自然に見て、赤ちゃんの頭が下がってくるのを待ちましょう。」
本人にもご主人にもその状況を説明し、逆に少し眠ることを促しました。
結局、少し眠った後、朝6時に陣痛も強くなり、赤ちゃんの頭もいいカンジに下がってきて、最後は吸引分娩でしたが無事に生まれました。結局、子宮口が全開大してから半日近くたってしまいました。
生まれてみると、羊水に血液が多く混じっており、赤ちゃんの気道吸引をすると大量の血液を飲んでいました。
元気に泣いてはいたのですが、その血液の量がかなり多かったので、喉頭鏡をつかって丁寧に気道を確認しながら吸引し、念のために小児科の先生に診察してもらいました。
小児科の先生が到着するなり、
「こんな元気に泣いてるのに、喉頭展開する必要ないですよ!」
叱られました。
「すいません・・・。」
・・・でも、赤ちゃんの口から吸引で出てきた血液はハンパな量じゃなかったのですよ。
で、その後、出勤してきた部下の産婦人科医にも、
「全開して12時間だなんて、夜中のうちに促進して、産ませてあげた方がよかったんじゃないですか?」
・・・また、叱られました。
ダブルで叱られたその日は、何となくブルーな気分でしたが、お産をした本人に、
「先生のおかげで最後まで頑張れました!」
と声をかけてもらい、救われました。
手を出すな、といわれたり、手を出すべきだった、といわれたり、くたびれたお産でしたが、
自然で安全なお産をじっと見守る、という、産婦人科医としてのボクのスタンスはブレてなかったと思います。
「昨日、すっごい時間かかったけど、赤ちゃん、元気に生まれたんやでー。」
と、夕方、家に帰り、4歳の息子に愚痴?を聞いてもらってました。
「それって、男の子?女の子?」
「男の子や。」
「ふーん。 ボク、女の子がよかったのにぃー。」
「そんなんいうてもしゃーないやん。 おちんちんついとったんやから。」
家に帰っても、なんとなく「叱られた」ような気がしました。
初産婦さんで、朝から陣痛が始まり入院となり、少しずつ進行してきました。
夕方、5時頃に子宮口が8センチメートルまで開大し、うまくいけばあと1、2時間くらいで生まれるはず。
「あと少し。 がんばりましょう。」
そう励ましながら、産婦人科医はじっと待つしかありません。
7時半には子宮口が全開大。破水もしました。
「いいカンジや。 8時過ぎには生まれるな。 『チームバチスタの栄光』、見れるやん。」
などと鼻歌交じりで待っていました。
そしたら、そのあと、いくら待っても進んでこないのです。
夜11時まで待って診察したら、まだまだ時間がかかりそうでした。
原因はどうやら微弱陣痛です。
「先生、すいません。 こんな時間までかかってしまって・・・。 先生も大変ですねぇ。」
「ボクは大丈夫ですよ。 たしかにちょっと時間がかかってるけど・・。 わはは。」
ボクの事を気にかけてくれるくらい本人は元気で、モニターでは赤ちゃんもすこぶる元気です。
こういう状況では、陣痛促進剤をつかって陣痛を強くしてあげるのことが多く、ボクはそれも考えました。
しかし、この方は大きめの子宮筋腫もあり、変に手を出しちゃうと裏目に出ることもあると思いました。
それに、今、促進剤を使っても効いてくるのに2、3時間はかかるだろうし、無理に真夜中にしなくてもよいのではと考えたからです。
「お母さんも赤ちゃんも元気だし、もう少し自然に見て、赤ちゃんの頭が下がってくるのを待ちましょう。」
本人にもご主人にもその状況を説明し、逆に少し眠ることを促しました。
結局、少し眠った後、朝6時に陣痛も強くなり、赤ちゃんの頭もいいカンジに下がってきて、最後は吸引分娩でしたが無事に生まれました。結局、子宮口が全開大してから半日近くたってしまいました。
生まれてみると、羊水に血液が多く混じっており、赤ちゃんの気道吸引をすると大量の血液を飲んでいました。
元気に泣いてはいたのですが、その血液の量がかなり多かったので、喉頭鏡をつかって丁寧に気道を確認しながら吸引し、念のために小児科の先生に診察してもらいました。
小児科の先生が到着するなり、
「こんな元気に泣いてるのに、喉頭展開する必要ないですよ!」
叱られました。
「すいません・・・。」
・・・でも、赤ちゃんの口から吸引で出てきた血液はハンパな量じゃなかったのですよ。
で、その後、出勤してきた部下の産婦人科医にも、
「全開して12時間だなんて、夜中のうちに促進して、産ませてあげた方がよかったんじゃないですか?」
・・・また、叱られました。
ダブルで叱られたその日は、何となくブルーな気分でしたが、お産をした本人に、
「先生のおかげで最後まで頑張れました!」
と声をかけてもらい、救われました。
手を出すな、といわれたり、手を出すべきだった、といわれたり、くたびれたお産でしたが、
自然で安全なお産をじっと見守る、という、産婦人科医としてのボクのスタンスはブレてなかったと思います。
「昨日、すっごい時間かかったけど、赤ちゃん、元気に生まれたんやでー。」
と、夕方、家に帰り、4歳の息子に愚痴?を聞いてもらってました。
「それって、男の子?女の子?」
「男の子や。」
「ふーん。 ボク、女の子がよかったのにぃー。」
「そんなんいうてもしゃーないやん。 おちんちんついとったんやから。」
家に帰っても、なんとなく「叱られた」ような気がしました。
患者からすれば、お母さんが満足していて、赤ちゃんが元気なら、
それでいいんだと思いますよ~(^^)
結果論になっちゃいますけど(汗)
無事にお産がすんで、良かったです。
しかし、息子さんは妹さんが欲しいんですかね?
自分には関係ないのに、「女の子が良かった」って。
子供の発言って面白いですよね☆
by りょお (2008-11-11 18:15)
はじめてコメントします。
haruさんのこちらのブログは(現場は大変だとは思いますが)
文章からやさしい空気が感じられるので
更新を楽しみにしておりよく拝見させていただいています。
(仕事は産科医療職で、自身、一児の誕生死の経験のあるものです。)
haru先生が「叱られた」とのことだったので^^
私も(待っていただけるなら)
待っていただいてお産させてもらえたほうが嬉しいです^-^
・・・なかなか現場ではそうはいかないことも多いですけどね。
by ぽぽん (2008-11-11 21:17)
こんばんは。
去年の今頃・・・朝入院して、翌朝の6時40分に無事出産した自分のことを思い出してしまいました。私的には陣痛かなり辛かったので、早く生ませてほしかったです。
なんて先生に言っても仕方ないんですけど…。
いつも読ませてもらってます。たまに出てくる息子さんに癒されてます。
by やあこママ (2008-11-11 21:31)
ははは、笑っちゃいけないですけど、haruさんの「しかられた」という姿が目に浮かんでしまって・・・失礼しました。
無事にご出産されたお母さん、本当にお疲れ様でした。
haruさんもお疲れ様でした。
息子さんもそこは「よかったね」って言ってくれたらよかったんですけどね。子どもは正直ですから(笑)
by ちばおハム (2008-11-12 09:44)
自然なお産って、いいなあって。
それが、一番安全ですものね。
今度こそ、がんばるぞ!って
思ってます。
by ぶたいく (2008-11-12 18:21)
息子さんの可愛らしい会話が微笑ましいですね^^
きっとその日は「叱られる日」だったのかもしれませんね。
たまに
「なんで今日はこんなについていないんだ・・・」
と思う事があります。
でもお母さんも満足されて、
赤ちゃんも無事だったらそれが1番なのかもしれませんね^^
by みっくんママ (2008-11-13 21:42)
りょおさん、コメントありがとうございます。
うちの子は、お産の話がでると(妻も産婦人科医なので)、かならず目を丸々させて、どっち生まれたのか聞いてくるのです。
彼が妹を欲しがっているのは事実ですが、男の子の赤ちゃんや女の子の赤ちゃんをイメージしてにやけています。
by haru (2008-11-14 11:11)
ぽぽんさん、はじめまして。
真夜中に医療介入することのリスクを考えると、待てるなら、できるだけ待ちたいと思っています。
あとは、お母さんがどれだけ頑張れるかですね。
「先生って、気が長いですねぇ。」
って、初めて一緒に働く助産師さんに言われることもしばしばで、どちらかとうと、「待つ派」の産婦人科医です。
こないだうちに面接・見学にきた助産師さんに、主任さんが、「こちらが〇〇先生です。待ってくれますよ~。」とボクを紹介してくれました。
「どんな紹介やねん。」とつっこみたくなりました。
by haru (2008-11-14 11:17)
やあこママさん、コメントありがとうございます。
早く生ませてあげたかったです。
なあんて。
待つとき、なんかの手出しをするとき、ボクは十分にリスク&ベネフィットを説明して、選べるなら選んでもらって、方針を決めています。
ただ、真夜中は、なるべく医療介入しないのが原則だ考えていますし、説明もしています。
by haru (2008-11-14 11:20)
ちばおハムさん、コメントありがとうございます。
息子に叱られたようでも、それでも、ニコニコ聞いてくれる笑顔を見るだけで、癒されます。
忙しいボクにとって、家族が一番の応援団です。
by haru (2008-11-14 11:33)
ぶたいくさん、コメントありがとうございます。
自然なお産は、あくまでも自然に進行していくもので、見守ることはあってもボクらが手を出す必要はないと考えるのです。
自然なお産にこだわることは大切ですが、危険が伴うようならそれは意味がないかも知れませんね。
by haru (2008-11-14 11:37)
みっくんママさん、コメントありがとうございます。
どんなに凹むようなことがあっても、元気な赤ちゃんの産声ですべてが解消します。
元気な産声を聞くまではしんどいことばかりかもしれませんが、それでいいのです。
by haru (2008-11-14 11:41)